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睡眠に関連して~②不眠とその治療

2023/07/14 BLOG


睡眠に関連した病気はたくさんあるのですが、来院される方の多くはその中でも不眠の悩みを抱えています。
今回は「不眠」を解決するにあたって考えてみるべき事項について少しだけ深堀りしてみたいと思います。

不眠の治療には本来「眠れない」という訴えをさらに具体的に把握し、分類や疾患の鑑別をしていく必要があります。その中で不眠の原因を探り、当てはまるものを把握した中で必要に応じて薬物療法を含め検討することが必要で、また使用する睡眠薬も個々の不眠の具体的な状況に応じて処方が必要であり、「最近寝れないんです。」「じゃあ睡眠薬だしときますね。」と安易にその患者さんに適さない睡眠薬を処方されることで余計に不安が高まることもあれば不眠の増悪につながることもあるため注意が必要です。

不眠のタイプや原因の病気について考える前にまず確認するべき3つの要素

生活習慣や環境の問題

不眠を訴える方でまずお伺いすることが多いのは実際に何時にベッドに入り、入眠できるのは何時頃で夜中に目が覚めることはあるか、また目が覚めた場合再入眠にどの程度時間を要するか、目覚めるのが何時頃かなど睡眠についての習慣です。眠れない方で長く眠る為早くベッドに入り入眠まで長い時間を床上で過ごすと入眠しにくいだけでなく中途覚醒を増加させたり熟眠感の低下を招くことがあるため注意が必要です。また、日中の運動や昼寝の有無や時間、喫煙や飲酒習慣なども非常に重要であることは「睡眠に関連して~①」の中でご紹介した通りです。

身体疾患による問題

かゆみや痛みがあると当然不眠の要因となり、慢性的な痛みとして頚椎症や腰痛などが問題となることが多いです。また、かゆみに関しては入眠過程で末梢血管が拡張するため、その際にかゆみが増悪し入眠困難をもたらすケースが多くアトピー性皮膚炎の方は夜間に皮膚を掻いてしまい中途覚醒を来すことも多いです。前立腺肥大や膀胱炎などの刺激や遅い時間帯の利尿薬の服用により夜間頻尿となり中途覚醒の原因となることもあり注意が必要です。

身体疾患治療薬剤による問題

身体疾患の治療薬の中には副作用として不眠をもたらすものがあるため注意を要します。例えば抗結核薬のイソニアジド(商品名イスコチン)や降圧薬のメチルドパ(商品名アルドメット)、抗パーキンソン病薬のレボドパを含む薬剤(商品名スタレボ、ネオドパストン、メネシットなど)、プロプラノロールなどのβ遮断薬やインターフェロン、副腎皮質ステロイドなどがよく知られており、薬剤性の不眠の場合は疾患によっては薬の変更や減薬が現実的には難しいことも多く不眠の状況をお伺いして睡眠薬の調整が必要となることが多いのが実情です。

上記(1)~(3)の原因がない場合に各種睡眠障害の鑑別を考えていくというのが不眠の訴えがあった場合の一般的な対応です。

不眠が一過性(数日間)であるのか、短期(1~3週間)であるのか、長期(1~3カ月以上)であるのかも不眠の原因と組み合わせて非常に重要な視点であり、確実に把握していく必要があります。
一過性や短期不眠の場合にも睡眠薬を使用することは多いですが漫然とした使用はさけることが一般的です。
長期不眠の原因としては前述した3つの要素による不眠はもちろんのこと、そのほかに精神性理性不眠や精神疾患に伴う不眠、アルコールに関連した不眠や高齢者の不眠などが睡眠薬の適応と考えられます。

ここからは具体的な不眠を来す疾患について言及してみます。

精神生理性(原発性)不眠 ~眠れないのではないかと心配で眠れない~

この疾患は不眠を主訴で来られる方で最も多い疾患です。寝付けなくて苦労した経験をすることで眠りに対してこだわりが強くなることがよくあり、布団に入ると「今夜は早く眠れるだろうか」ということが不安となり不眠恐怖という新しい精神的な問題が生じ、入眠時の不安が増強され慢性の不眠にいたるケースが多いです。

【疫学】
小児期には稀で典型的には20-30代で始まり、中年以降から急激に増加し40-50歳代がピーク。

【症状】
特に入眠困難が多く「なかなか寝付けないが眠りについてしまえばある程度眠れる」と訴える方が多いです。ただ、実際には中途覚醒や早朝覚醒、熟眠困難を来す方も一定数おられます。

【治療】
睡眠や睡眠衛生に関しての教育指導や精神療法などの非薬物療法に加え睡眠薬の作用機序や血中半減期などの臨床特性を理解したうえで、不眠のタイプにより睡眠薬を使いわける薬物療法を行うことが効果的です。

精神疾患による不眠

不眠は多くの精神疾患における基本的な症状で、特にうつ病や双極性感情障害などの気分障害圏や不安障害(パニック障害など)においては診断基準にも挙げられています。他にも統合失調症や認知症など様々な疾患で不眠を来します。そのため、不眠の背景にあるこういった精神疾患をきっちり診断しその疾患を治療していくことが随伴する不眠の改善のためにも必要になってきます。

睡眠時無呼吸症候群

【症状】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)とは、睡眠時の完全な上気道の閉塞により10秒以上持続する無呼吸、あるいは部分的閉塞による低呼吸が頻回に起こり夜間の睡眠の分断と動脈酸素飽和度の低下を来す状態です。主な症状として大きなイビキや睡眠時の窒息感やあえぎ呼吸、夜間の頻尿、覚醒時の倦怠感、日中の眠気などを認めます。日中の眠気の結果として交通事故や仕事中の怪我、学業や仕事の作業効率の低下をまねいたり抑うつ気分の要因となることもあります。一方で閉塞性睡眠時無呼吸の重症度は眠気の強さとはあまり相関はしません。

【検査】

簡易検査
鼻に呼吸センサーを、指に体内の酸素濃度を調べるセンサーを取り付けて検査を行います。当院でも簡易検査と解析が可能です。ご自宅で睡眠時にセンサーをとりつけて就寝して頂き、結果を後日医療機関で解析します。さらに詳しく調べるために、より精密な検査を行う場合もございます。

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG :Polysomnography)
終夜睡眠ポリグラフ検査は、睡眠状態を総合的に評価する検査です。簡易検査の項目に加え、脳波や筋電図、眼球の動きなどを測定することで、睡眠の量や睡眠の深さ、睡眠の安定性、覚醒の程度、睡眠の効率などを呼吸状態の詳細とあわせて評価します。検査には1泊2日の入院が必要となります。

【閉塞性睡眠時無呼吸による合併症リスク】

夜間の低酸素血症を長期間繰り返すことで心循環系の合併症として高血圧や心筋梗塞、うっ血性心不全や脳卒中のリスクを高め、ひいては早期死亡の原因となりえます。
また、2型糖尿病発症の危険因子でもあり心房細動などの不整脈との関与も示されるなど多彩な疾患の原因となりえるため「ただのいびき」などと軽く見てはいけません。早めの診断や治療的介入が肝要であるといえます。

【治療】

生活指導
肥満に伴って発症、増悪している場合は減量により上気道周囲の組織の肥厚が軽減するため症状が改善します。軽症例では抱き枕を利用するなどして側臥位で寝ると無呼吸の回数を減らすことができます。

CPAP(在宅持続陽圧呼吸法)
鼻部にとりつけた特殊なマスクから空気を送り込み、上気道内を陽圧に保つことで上気道の閉塞を防止する機器を用いた治療法です。
当院でもCPAPの導入が可能です。

マウスピース様装具
マウスピース様の歯科装具を用いることで睡眠中の下顎の後退を防ぎ、舌の沈下による気道の閉塞を防ぎ、無呼吸を改善します。主にはCPAPの保険適応とならない比較的軽度の患者さんに対して行われる治療です。

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
むずむず脚症候群(RLS)は下肢を中心に夜間睡眠時に不快な耐え難い感覚が起こり、じっとしていることが難しくなります。実は有病率が高く人口の2~4%の方が罹患していると考えられています。

【症状】
痛みや不快感、虫が這う感じ、むずむず感、かゆみなど多彩な表現をされることが多く、常に足を動かしたい欲求があり、動かすと楽になるという状態であればむずむず脚症候群(RLS)の可能性が高いです。下肢を動かしているときは起こらず寝たり座って下肢を動かさない沖に生じます。この症状は夜間に集中して発現し増悪します。このような症状で入眠が困難となり、夜間の中途覚醒時にも同様の症状が起こり再入眠が困難となることもありますが早朝にかけては軽減や消失していることが多いです。
また、RLSの50%で次に言及する周期性四肢運動を合併します。
RLSでは鉄欠乏性貧血も誘因となるため血清フェリチンが低値の場合は鉄剤による補充療法も必要です。(血清フェリチン濃度50ng/ml以下の場合補充療法を行います。)

【誘因】
妊娠中、鉄欠乏性貧血、慢性腎不全(特に透析中)、胃切除後、関節リウマチ、パーキンソン病、カフェイン摂取、葉酸欠乏など

【治療】

中枢ドパミン作動薬
レボドパ・カルビドパ合剤やプラミペキソール(ビ・シフロール)などが効果的で

α₂δリガンド
ガバペンチン エナカルビル(レグナイト)などが効果的です。

抗けいれん薬
クロナゼパムは感覚や運動症状だけではなく入眠促進や中途覚醒の抑制も期待できますが重症例には効果は不十分です。

周期性四肢運動障害

【症状】
夜間睡眠中に片側か両側の足関節の背屈運動を中心とする周期的な不随意運動(PLMs)が反復して起こるために睡眠感の障害が生じます。PLMsは1回の持続は0.5-10秒と短く出現感覚の多くは20-40秒です。むずむず脚症候群の50-80%でPLMsは出現し、ノンレム睡眠のときに多く中には起きて横になっているときに出現する方もいます。疲れているときやカフェイン摂取時に起こりやすく多発すると中途覚醒が生じて睡眠の質や量が低下することで日中の眠気や倦怠感につながります。

【診断】
確定診断には終夜睡眠ポリグラフ検査を施行が必要ですが、家族からの問診等でもある程度診断は可能です。一方で本人に自覚がないため多くは見過ごされているのが現状です。

睡眠・覚醒層後退症候群

人口の0.17%、高校生の0.4%が有病率として推定され、不登校や頻回欠勤などの不適応に繋がり慢性に経過して長期間の治療を要することが多いです。

【症状】
生体リズムの遅れにより睡眠の時間帯が遅くなっていることが特徴で典型例としては明け方まで眠れず、昼頃にならないと起床できないといった訴えです。必ず起きないといけない重要な試験や仕事の時でも起床できず、無理して起きても午前中は過剰な眠気や集中力低下、頭重感などのために仕事や勉強が難しく午後から夕方になると消失することが多いです。

【治療】
多くの場合睡眠薬による治療は無効で、生体リズムは遅らせるほうが進ませるより簡単なため、毎日3時間ずつ入眠時間を遅らせて行き、適切な時間になったところで固定するという手法も行われていましたが効果としては1カ月程度しかもたず、朝の高照度光療法やメラトニン、ラメルテオン(ロゼレム)などの薬物により睡眠位相の前進を行い、組み合わせるようになっています。

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