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睡眠に関連して~①睡眠のよくある疑問

2023/06/20 BLOG

今回は当院にて睡眠の簡易検査やCPAP導入、過眠症へのモディオダール処方などを含め睡眠専門外来を開設する体制が整いましたので睡眠について掘り下げてみたいと思います。
睡眠に関しては悩まれる方も多く、正確な情報を多く提供できるよう数回に分けて記載していきたいと思います。

目次

1. 睡眠の適正時間はどれくらい?
2. 睡眠前に気をつけることは何?
3. 寝る前にお酒を飲むのは睡眠によいですか?(寝酒は不眠のもと)
4. 睡眠のリズムを整えるためにはどうしたら?
5. 昼寝をしてもよいですか?
6. 夜十分な眠っているのに日中が眠たいのはなぜ?
7. 市販の睡眠薬やサプリメントは不眠症に効果がある?

1. 睡眠の適正時間はどれくらい?

一概に何時間が適正であると断言することは困難な面があります。アメリカの大規模調査では睡眠時間が6時間未満の人や8時間以上の人は7時間程度の人と比べて6年後の死亡リスクが高いことが示されています1)。日中の眠気が強い場合や休日に平日より数時間は眠らないといられないようであれば睡眠不足と判断することが一般的です。また、通院されている患者さんにもよく話すことですが必要以上に長時間寝床にいるとかえって睡眠が浅くなり熟眠感が損なわれたり睡眠のスイッチが入りにくくなるため床上(ベッドの上)にいる時間には注意を払う必要があります。その他各種の疫学調査からは6時間以上8時間未満程度の睡眠時間の人が高血圧や糖尿病、うつ病などのリスクが低いことが報告されています。

2. 睡眠前に気をつけることは何ですか?

就寝前は緊張や刺激により入眠が妨げられるため布団に入る前にリラックスできていることが望ましいです。リラックス法は個々で異なり、同じ方法でもかえって緊張が高まる人もいるため一概に個人に合ったリラックス法を見つける必要がありますが、例として軽い読書や音楽、ぬるめの入浴や香りなどが挙げられます。一方、避けるべきこととしてカフェイン摂取(日本茶、コーヒー、チョコレート、コーラなど)は覚醒作用を持つ代表的な物質で、覚醒作用は摂取後約30分で発現しレギュラーコーヒーカップ1杯(約100mg)で90分、200mgで4時間作用するため、就寝前4時間のカフェイン摂取は避けることが望ましいです。ちなみにカフェインは利尿作用もあるため尿意でも目覚めやすくなるデメリットがあります。早く寝床につくことは却って不眠が強まりますので注意が必要です。よく、患者さんも「早く寝床には入るようにしているんですけど。。。」というお話を伺いますがかえって寝れなくなりますので原則は遅寝になってもよいので決まった時間に早起きすることが肝要です。布団に入り部屋を暗くすると感覚刺激が減少し、ちょっとした物音(時計の音など)が気になったり些細なことが頭から離れず不安や緊張が高まります。今夜は眠れるだろうかと心配している場合眠ろうとすればするほど目がさえて眠れなくなってしまうので一旦布団を出て自分なりのリラックス法を実践し眠気を覚えてから布団にはいることが理想的です。

3. 寝る前にお酒を飲むのは睡眠によいですか?(寝酒は不眠のもと)

睡眠薬代わりにアルコールを使用すると寝つきはよくなりますが睡眠が浅くなり中途覚醒が増えるため全体として睡眠の質の低下を招き、また連用することで容易に慣れが生じ同じ量では眠れず使用量が急速に増加しやすく多くの問題が生じやすい側面があります。睡眠薬に関しては昔使われていたバルビツール酸系の睡眠薬の名残で誤解されている場合が多く、医療者の中でもネットの情報に流され正しい知識がないこともありますが現在の睡眠薬は適正に使用すれば耐性は生じにくく飲酒よりは遥かに安全と考えられます。

ただし一概に「不眠」の訴えがあっても、すぐに睡眠薬処方と考えるのではなく患者の睡眠習慣やその不眠が入眠困難なのか中途覚醒なのか早朝覚醒なのか、また不随する症状として睡眠中の激しいイビキや足のピクつき、むずむず感などを伴う特異的睡眠障害の有無やうつ病などの精神疾患がないかなどを確認するなどが必要となります。睡眠薬の種類や特徴についてはまた後日記載したいと思います。
尚、参考程度にタバコに関しても記載しておきます。「2. 睡眠前に気をつけることは何ですか?」で記載したように就寝前のリラックスは睡眠にとって重要です。タバコの煙に含まれるニコチンは吸入直後にはリラックス作用がありますが、この作用は急速に消失し覚醒作用のみが数時間持続します。そのため夜間の喫煙は睡眠を障害します。禁煙治療のニコチンガムやニコチンパッチも同様に注意が必要です。

4. 睡眠のリズムを整えるためにはどうしたら?

①朝の散歩や屋外の光の取り入れ

規則正しい生活を送ることが睡眠にいい影響を与えることは言うまでもないですが、前述したように就床時刻をそろえるよりは毎朝同じ時刻に起床し、起床後なるべく早く太陽の光を浴びることが次の日の速やかで快適な入眠をもたらすことがわかってきています。起床後に目で受容した光が体内時計に伝えられ、リズムをリセットし、その約15-6時間後に眠気が出現する2)という研究結果もあり、早寝早起きの習慣化にはまず早寝ではなく早起きから始め、起床後の朝の散歩などで太陽の光を取り入れることが重要です。ヒトの体内時計による睡眠・覚醒の概日リズムは約25時間であり、地球の24時間の自転周期に合わせるためにリズムをリセットする必要があるわけです。平日忙しく週末に寝だめをしようとする方もいますが、朝に遅くまで布団にいることで朝の光を取り入れるのが遅れ、結果としてその夜にさらに寝つきが悪くなる可能性があります。
「部屋を明るくしていたらいいですか?」とおっしゃる方もおられますが、室内の電球や蛍光灯でも明るく感じているのはヒトの眼に備わる調節機能が強力であるためで、実際には通常室内の明るさは太陽光の1~10%程度しかなく、曇りの日でも屋外には室内の10倍程度の光量があります。起床後2時間以上暗い室内にいると体内時計のリセットがなされないため平日も休日も早めに外の光を浴びるよう心がけましょう。屋外では、空や周囲のものから反射してくる太陽光で十分な光量を得られるため、網膜への影響も考え太陽を直接見る必要はありません。
一方、夜入眠前の強い光は生体リズムを遅らせ、寝つきを悪くします。最近のコンビニやガソリンスタンドなどは家庭の屋内とは違い1000~2000ルクスの強い照明を使用しているので注意が必要です。

②規則正しい食事

また、食事は脳へのエネルギー補給となり、体温を高め、活動レベルを高めることに役立ちます。抑うつが強い方で食欲不振を認める場合もヨーグルトやフルーツなど食べやすいもので少量でもよいので3食摂ることを睡眠の観点からは私はおすすめしています。(睡眠の悩みがない方が必ず3食必要とは限りませんが。)朝食をきっちり取っていると朝食の1時間前から消化器系の活動が活発となり、朝の目覚めを促進します。一方で夜食を食べ過ぎると寝つきが悪くなり、夜中に目が覚めるなど睡眠の質が悪化します。食物の消化が終わらないまま就床してしまうことで睡眠中に消化器系の活動を余儀なくされ、睡眠が妨げられるためです。空腹で寝付けない場合はせめて消化のよい軽いスナックなどを取ることが好ましいかもしれません。またずいぶん以前に運動が抑うつや不安に効果があることをブログで記載したことがありますが、昼間の運動は夜間の睡眠の質の改善にもつながります。少し話がそれますが抑うつに効果的と言っても症状が軽度の場合であり、抑うつが重度の場合は運動はかえって悪影響となる可能性が高くおすすめしません。話を戻しますが、運動習慣がある人は不眠に陥りにくいとの結果3)があり、毎日規則的に行うのが効果的です。

5. 昼寝をしてもよいですか?

昼寝に関しては睡眠に悩まれている方で診察中によく話題になりますが、以前は昼寝は夜の睡眠の質を低下させるとの考えもありましたが、最近の研究では、昼食後から15時までの時間帯で30分未満(若年者は20分未満が好ましい)の規則正しい昼寝は日中の眠気を解消し、眠気による作業能力低下の防止に役立つことが報告されています。「1. 睡眠の適正時間とは」でお話したように日中の眠気は睡眠不足の判断において重要ではあり ますが、一方で午後に一時的に眠くなることは体内時計のりズムと関連した現象と考えられ、この生理的な眠気の範疇においてはこの時間帯をやりすごすと眠気は覚めてきます。30分以上の昼寝はかえって覚醒後にすっきりせず、おすすめできません。

6. 夜十分に眠っているのに日中が眠たいのはなぜ?

昼間の眠気に関してさらに掘り下げてみますと、そもそも人によって必要な睡眠時間は個人差がある為、まず夜間の睡眠時間が本当に十分かどうかという検討がまず必要です。例えば長期休暇などでしっかり睡眠時間をとると昼間の眠気が軽減される場合は普段の睡眠時間がその人にとっては不十分と考えられます。
また、騒音や光などの寝室の環境によって睡眠が浅くなる要因がないかの検討も必要です。騒音は自動車の音など屋外からの音だけでなく隣で寝ている人のイビキ、歯ぎしりなども含まれます。全くの無音状態もかえって不安が強まり不眠となることがあり、快適な睡眠のために寝具などにこだわることは選択肢の一つとしてよいかと思います。
午後1時~4時にかけては前述した生理的に眠気がくる時間帯でもあり、この時間帯に限定された時々生じる眠気はあまり問題でないことも多くあります。あとは時間としてしっかり睡眠時間を確保していても生活リズムが乱れていれば当然眠気がばらばらの時間帯に来る可能性があります。
一方で、これらの要因があてはまらないのに日中の眠気が目立つようなら病的な過眠症の可能性があります。例えば睡眠時無呼吸症候群による睡眠の質の悪化からの続発性の過眠症や中枢性の過眠症など病態に応じた治療が必要になります。
過眠症など詳しい睡眠に関連した疾患については後日詳しくブログで記載する予定です。

7. 市販の睡眠薬やサプリメントは不眠症に効果がある?

患者さんの中には不眠に悩んでいるが精神科の受診や睡眠薬の服薬には抵抗があり、市販薬の内服を試す方も多くおられます。服薬すること自体が悪いとは思いませんし、服薬することで改善する場合もあるかと思います。一方で、不眠症に効果があるのかと問われると事実として効果は期待しにくいとの返答になります。漢方薬やドリエルなど市販の薬はいくつかありますが不眠症患者さんを対象にした 臨床試験(治験)で⻑期的な治療効果と安全性がしっかりと確認されていません。ドリエルなども市販薬の注意書きをよく読んでいただきますと「⼀時的な不眠に使⽤すること」、「不眠症の診断を受けた⼈は使⽤しないこと」と記載されています。この場合の一時的な不眠とは旅行や心配事に伴う数日程度眠れないことを指し、一方で不眠症とは眠れないことから日中の眠気や倦怠感などの心身の不調が出た時のことを指します。その場合は市販薬では基本的に対処は難しいためきちんと専門医を受診することをお勧めします。サプリメントに関しても同様に不眠症に対する効果を謳うサプリメントが多数ありますが、エビデンスレベルの⾼い臨床試験により有効性が検証されているものはごく少なく、また安全性の検証はほとんど⾏われていません。睡眠薬への誤った認識等についてはまた次回以降に記載しますが、そもそも医薬品として保険診療で処方される薬は厳しい臨床試験をクリアしているため安全性が高く、その点サプリメントなどは安全性の検証があまりなされていないにも関わらず安易に服薬を継続しがちであることが私自身、普段診療をしていて気になっているところです。
今回は睡眠専門外来の開始に伴い、睡眠に関してお悩みの方の来院が増えることが予想されることから、よくある疑問やお悩みに関連した情報をいくつか記載させていただきました。
次回以降のブログでも同じように睡眠に関するお悩みに関連した情報や、さらに細かい睡眠に関連した疾患などについても順番にアップしていきます。

1) Kripke DF,Garfinkel L,Wingard DL, et al : Mortality associated with sleep duration and insomnia. Arch Gen Psychiatry. 59(2):131-136.2002

2)Kubota T,Uchiyama M,Suzuki H, et al:Effects of nocturnal bright light on saliva melatonin, core body temperature and sleep propensity rhythms in human subjects. Neurosci Res,   42(2):115-122,2002

3) Kim,Uchiyama M,Okawa M, et al:An epidemiological study of insomnia among the Japanese general population. Sleep, 23(1):41-47,2000

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