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不安や恐怖 ~①パニック障害

2023/05/29 BLOG

当院でも来院される多くの方が不安の症状をお持ちです。「不安」が高まることで「焦燥」というそわそわ感からじっとしていることが難しくなる場合や二次的に「抑うつ」、つまり気分の落ち込みを来し食欲不振や不眠を招くなど多彩な症状に発展していくことがあります。

不安が高まることでパニック発作のような著しい動悸(ドキドキ)や胸部不快感,死ぬかもしれないと感じるほどの恐怖を覚える症状を認めることもあります。

パニック障害の生涯有病率は3.5-4.5%と報告されていますが、パニック障害に至らないパニック発作の生涯経験率は約20%とも言われており決して珍しい症状ではありません。

また誤解されていることが多いですがパニック発作を起こす病気はすなわちパニック障害というわけではなく、パニック発作はパニック障害を除く不安障害(不安症)やその他の精神疾患でも起こり得ます。

今回はパニック障害についてまずはご紹介し、他の不安障害に関しても次回以降言及していきたいと思います。

パニック障害(パニック症)の特徴

パニック障害(パニック症)は、特定の刺激や状況に限定されず、予期できないパニック発作が繰り返し起こることを特徴としています。よく誤解されている例えば飛行機内や電車内などの公共交通機関や人込みや映画館など逃げることが困難な状況などに反応して怒る恐怖や不安、パニック発作を起こすのは定義上「広場恐怖症」に分類され、大きな分類として「不安症」の括りに含まれてはいますがパニック障害とは異なります。(実際には併発、併存することも多いです。) また、パニック発作を経験することで「また発作が起きるのではないか」という「予期不安」とよばれる持続的な懸念やそれを回避するなど行動(例えば発作が起きそうな場所を避けたり外出しなくなるなど)を特徴としています。

参考としてDSM-Ⅴのパニック障害の診断基準は以下のようになっています。

A. 頻繁なパニック発作が存在する。パニック発作は、突然発生し、急速にピークに達し、最大で数分間続く。発作中には、以下の4つ以上の症状が生じる:
1.心拍数の増加または不規則な心拍
2.発汗
3.揺れやふるえ
4.息切れや窒息感
5.胸の痛みまたは不快感
6.吸入困難や窒息感
7.動悸または心臓の鼓動感
8.手のひらや足のひらの発汗やふるえ
9.倦怠感または体力の低下
10.睡眠障害、不眠症、または過眠症
11.対象の現実感喪失感、反身感、または死の恐怖感

B. パニック発作に対する心配や心理的苦痛がある。また、それにより、少なくとも1つの次の状況を回避するための挙動変容が生じる:
1.パニック発作が起こる状況(例: 閉所、高所、公共の場所)
2.パニック発作が起こるときに助けが利用できない状況(例: 一人の状況、外出中)
3.パニック発作が起こるときに逃げることが困難な状況(例: 車の運転、列車や飛行機の中)

C. パニック発作や関連する心配が、日常生活、社会的活動、職業的機能、学業の成績、または重要な領域において臨床的に意義のある苦痛や機能の低下を引き起こす。

D. 症状は他の薬物使用や身体疾患によるものではないことが示されている。

E. 他の精神障害(例: 不安障害、統合失調症)の症状によって説明できない。

パニック障害の疫学

パニック障害は通常、10代後半から30代初めに発症することが多いですがどの年齢層でも発症する可能性があります。 また、女性の方が男性よりも多く見られます。一般的に、女性の方が男性よりも2倍程度多く罹患するとされています。 パニック障害の罹患率は一般的に比較的高いとされており、研究によると、世界中で年間1〜2%の人々がパニック障害を経験すると推定されています。また、 パニック障害は他の精神障害との共病性が高いことが知られています。特に、他の不安障害(一般化不安障害、社交不安障害)、うつ病、物質使用障害との関連が見られます。また、パニック障害の人々の中には、家族の中で同様の症状や不安障害の既往歴を持つ人々が多く、遺伝的要素が関与している可能性が示唆されています。しかし、遺伝的要素があるとしても、それが必ずしもパニック障害を引き起こすわけではありません。遺伝はリスクを高める要素の一つであると考えられていますが、環境的要素(ストレス、トラウマ、健康状態など)も疾患の発症に大きく関わります。それゆえ、遺伝的なリスクがある人々でも、適切なストレス管理、健康的なライフスタイル、必要な場合は適切な治療を通じて、疾患の発症を予防または管理することが可能です。

パニック障害の原因

パニック障害の原因の仮説としては小難しく記載してもわかりづらくなってしまうため、ざっくりした説明で記載しますと「脳の扁桃体という場所が誤って過活動を起こす」ためと考えられています。すなわち脳が勘違いをする、もしくは誤作動を起こすことによって生じていると考えてもらえればよいかと思います。

ここで重要な点としては「精神的に弱い」から発症したりするものではないということでしょうか。これは医療従事者の間でも誤解があることがあり、パニック発作やパニック障害を起こす人は精神的に弱い人であるというレッテルを貼られてしまうことがあるのが今の世の中の実情であると診察しながら感じることが多くあります(実際、発症した方自身も発症するまではそういった印象を持っておられる方も多いかと思います。)。しかし、実際には脳の誤作動である以上今健康な状態にあるどなたにも起こり得るものであり、決してその人の性格面から発症しているわけではありません。 一方で発症後は「死ぬかもしれない強い不安」に度々襲われるわけですから、病前がどんな健康的な人であっても精神的に不安定になって当然であるわけです。

パニック障害の脳画像的研究

前頭前野は認知的な制御機能を担う領域であり、パニック障害の人々では前頭前野の活動が低下していることが示唆されています。これにより、パニック発作時の過剰な恐怖反応を抑制する能力が低下し、パニック症状の制御が困難になる可能性があると考えられています。またパニック障害の患者は脳の感覚処理に関連して異常な活動が見られることがあり、特に、視覚や聴覚の感覚情報を処理する領域での過剰な活動が報告されています。これにより、環境の刺激に対する過敏な反応が生じ、パニック発作を誘発している可能性があります。

パニック障害の環境要因との関連

慢性的なストレスや急性のストレスイベントは、パニック障害の発症や症状の悪化に寄与することがあります。これには仕事や学校でのストレス、家庭内の問題、経済的困難、健康問題、または大切な人との死別などが含まれます。また、幼少期における親の不安や過保護、虐待やネグレクト、または他の深刻な家庭内問題もパニック障害の発症に影響を及ぼす可能性があります。大学入学、新しい仕事、結婚、離婚、出産など、生活の大きな変化も旧姓のストレスイベントともなりえることから不安症状を引き起こす可能性があります。また、生活習慣として喫煙、アルコールまたは薬物の乱用は、パニック障害の症状を引き起こすか悪化させる可能性があります。

パニック障害の治療

薬物療法としてはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)もしくはSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)を用いることが多く補助的に不安症状を抑えるために抗不安薬などを頓服薬として使用することが多いです。また、認知行動療法を併用する場合もあり、認知行動療法はパニック障害の治療に最も一般的に用いられる心理療法の一つです。この療法では、個々のパニック発作につながる恐怖や不安を引き起こす思考パターンと行動を特定し、それらを変えることを目指します。 効果や寛解率は個人によって異なるため、一般的な数値を提示することは困難ですが、ある研究によれば、SSRIやSNRIを使用したパニック障害の治療では、多くの患者が症状の改善や寛解を経験しており、寛解率は50〜70%程度と報告されています。

《SSRIやSNRIの種類と効果》

SSRI
1.セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト):パニック障害を含むさまざまな不安障害の治療に広く用いられます。
2.パロキセチン(商品名:パキシル):パニック障害、うつ病、OCD(強迫性障害)、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などに対して効果的であるとされています。
3.エスシタロプラム(商品名:レクサプロ):不安障害とうつ病の治療に用いられます。
4.フルボキサミン(商品名:ルボックス):主に強迫性障害の治療に用いられますが、一部の研究ではパニック障害にも有用性が報告されています。
※参考(日本では未承認)フルオキセチン(商品名:プロザック):一般的にはうつ病の治療に用いられますが、パニック障害の治療にも有用であるとされています。

SNRI
1. ベンラファキシン(商品名:イフェクサー):うつ病や一部の不安障害、神経性疼痛の治療に用いられます。
2. デュロキセチン(商品名:サインバルタ):うつ病、一般化不安障害(GAD)、慢性疼痛などの治療に用いられます。

《認知行動療法の概要》
まず、恐怖や不安の感情を引き起こす誤解や非効率的な思考パターンを特定し、それをより現実的で健康的な視点に変えることを目指します。加えて暴露療法として患者がパニック発作を引き起こす可能性のある状況に徐々に、かつ制御された環境で曝露を試みる方法です。これにより、患者はパニック発作に対する恐怖を克服し、より効果的にそれに対処することができます。ほかにも深呼吸、進行性筋弛緩法、マインドフルネス、瞑想などのリラクゼーション技法は、パニック発作が発生した際に落ち着きを取り戻すのに役立ちます。このような技法を組み合わせて、薬物療法と併用し治療を行うことがあります。

パニック発作時には動悸や喉の詰まり感、吐き気や息苦しさ、眩暈などの身体症状を経験するため、内科や耳鼻科などの身体科受診で異常が見つからず受診される場合が多く、また精神科や心療内科受診への抵抗感から治療の開始が遅れる場合も多いですが、パニック障害は十分に治癒が望める病気であり、また精神的に弱い方がなるわけではなく誰にでも起こりえる比較的有病率の高い病気であり、症状を経験された方は深く悩みすぎずまずは専門科に受診いただければと思います。

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