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強迫性障害(強迫症)

強迫性障害は、1994年のDSM-Ⅳの診断基準までは、不安を中核とする不安障害の一型とされていましたが、強迫症状の出現し必ずしも不安が介在しないケースや生物学的メカニズムでのほかの不安症(不安障害)との違いが明らかになる中で、不安症(不安障害)とは分離させる気運が高まり、その後のDSM-5では「繰り返し行為」や「とらわれ」を特徴とする強迫症及び関連症群(obsessive-compulsive and related disorder : OCRD)という新たなカテゴリーの中心に位置づけられました。ICD-11においても、その流れがある程度踏襲されており、大きくこの30年程度で疾患概念や診断等に変遷があった精神疾患と言えます。

疫学

強迫性障害(強迫症)は、一般人口の生涯有病率は1~2%程度であり、男女比はほぼ同等で、アメリカにおける発症年齢は19.5歳と比較的若いデータがあります。25%は14歳までに発症し、特に男性では10歳までが25%とさらに発症が若くなっています。一方で発症後の受診に至るまでの未治療期間は7~8年とされており、重症化して生活上の障害が顕著となるまで受診になかなか至らない状況があります。しかし、未治療期間が長いほど難治性の傾向が高まるため早めの受診が望ましいことは言うまでもありません。

病因

病因として特定なものはありませんが、パーキンソン病などの大脳基底核のドパミン系異常に関わる神経精神疾患との関連は少し注目されており、また感染症や自己免疫性疾患が強迫性障害の発症に関わることがあります。その一例として、6~12歳頃のA群β溶連菌感染症における上気道(口、鼻~喉にかけて)感染はリウマチ熱を合併しその後期症状の一つとして強迫症状を高率に認めることがあります。
その他に、強迫性パーソナリティー(秩序や規則に対して強いこだわりを持つ傾向)などの人格特性や虐待などの心的外傷体験との関与の報告もあります。 現在もPETやSPECT検査、fMRI検査などの画像研究が続けられており、その結果等に基づく一つの強迫性障害の脳病理の仮説としては、前頭葉-皮質下回路に関する神経ネットワーク仮説(OCDループ仮説)が最も注目されています。

  1. 眼窩前頭前皮質(orbitofrontal cortex : OFC)を主とした前頭葉領域の活性化に伴い、状核において制御障害(ブレインロック)が起きる
  2. 間接経路の線条体からの抑制ニューロンの活動性が低下し、淡蒼球外側→視床下核の抑制系ニューロンが過活動となり視床への抑制系の制御が弱まる
  3. 視床とOFCの間のさらなる相互活性が生じ、皮質で病的な過活動が持続し増強する

その結果として強迫症状が維持、増幅されるという仮説です。
難しすぎますね。読み飛ばしていただければと思います。

症状

最新の診断基準に当たるDSM-5やICD-11で定義された強迫性障害(強迫症)の特徴的な臨床症状は強迫行為あるいは強迫観念のいづれか或いは両方を認めることです。

強迫観念

反復的で持続的な思考、衝動、あるいはイメージで侵入的で好ましくないものとして体験され、通常は不安に関連しています。
→強い不安や苦痛を引き起こすために、我慢しようとしたり、他の思考や行動(例えば手を洗う、呪文を唱えるなど)でやわらげようとしたりします。

強迫行為

繰り返しの行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認するなど)や心の中の行為(例:祈る、数える、声を出さず言葉を繰り返すなど)で多くは強迫観念への反応として厳密な規則に従って「完璧だ」という感覚に達する目的で、本人は駆り立てるように行います。

これらは現実的な意味では明らかに不合理で過剰なものと言えます。
ほとんどの患者さんには強迫観念と強迫行為の両方が見られ、自分でコントロールできず、苦痛や支障を来しています。

具体的には、公衆トイレやつり革などの接触で、汚染や感染の脅威を強く感じれば不安が高まり、それを完全に浄化したい欲求から執拗に手を洗い続ける。或いは泥棒や火事を恐れるあまり、そのリスクをなくそうと外出前に施錠やガス栓の確認をきりなく繰り返したり、「大丈夫か」という保証を何度も求めたりする。次第にそれに要する時間や回数を増やしていき、嫌悪したり恐怖を感じる環境を避ける回避行動や、家族に保証の要求に加えて、手洗いなどの行為の強要や自らに代わり確認させるといった行為の代行によって家族を巻き込み、重症化し、慢性的な経過をたどる中で、次第に行動のパターン化や習慣化がすすんでしまいます。
このような回避行動や巻き込み行為は、それによって楽になった、危機回避できたという誤った認識からその行動が合理化されてしまい、必要性が誤って正当化されてしまうという悪循環になります。

一般的に発病初期の患者さんは、このような観念や行為の無意味さや不合理性、過剰性を認識して、なんとか制御しようと抵抗を試みますが、不安や怖さ、苦痛に圧倒されて思うように止めることが出来ず、大きな葛藤やストレスが生じるに至ります。

強迫行為の出現はこのような典型的なタイプの他に視覚や触覚、聴覚などに関連した「気持ちの悪さ」が先行し、それを完全にしたい「まさにぴったり感(just right feeling)」の追求や気持ち悪さの緩和のために特定の行動が切り返されるタイプもあります。
例えばスリッパを「ぴったり」左右対称に並べなおす、服の腕を通す時の感覚やドアや冷蔵庫を閉めた時の完璧な「まさにぴったり感」にこだわり、服の着脱やドアの開け閉めを繰り返すなどです。

診断

強迫観念や強迫行為が存在し、これらが強い苦痛を生じて時間を浪費させ、日常や社会的、職業機能に著しい障害を来しており、他の精神疾患で説明できないことを確認する必要があります。

治療

主要な治療は抗うつ薬SSRIと認知行動療法です。
実際には初診で受診される方の多くが、うつ病の併存や強迫症状に伴う高度の不安、そして著しい疲弊状態を認め、当初からの認知行動療法が難しいことが多く薬物治療からの開始が一般的であると言えます。

現在薬物療法の第一選択とされるSSRIは、最近のネットワーク・メタアナリシスでも有効性が検証されています。フルボキサミン(ルボックス®,デプロメール®),およびパロキセチン(パキシル®)などが例に挙げられ、効果や副作用を注視しながら徐々に増量していきます。SSRIの評価には十分な期間、投与を継続する必要があり、投与開始から最低12週間、最大容量で4~6週間は継続し効果判定をすることが望ましいとされています。多くの場合は部分的な改善を認めますが、40%の患者さんでは反応性が得られません。この場合は第二選択薬としてほかのSSRIやクロミプラミン、少量の非定型抗精神病薬の使用が検討され、これらの非定型抗精神病薬のSSRIへの付加投与は二重盲検比較試験により有効性が検証されており、アリピプラゾール(エビリファイ®)の付加投与も有効性や安全性が報告されています。
リスペリドン(リスパダール®)のSSRIとの併用も統計的優位な有効性が示されています。
薬物療法は一旦奏功しても中断すれば再発する可能性が高く、もし減薬する場合も最低でも6カ月、通常は数年は継続することが望ましいでしょう。

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