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全般性不安障害(全般性不安症)

全般性不安障害は少なくとも6カ月以上続く過剰な不安・心配を中心的な特徴とする疾患です。心配の内容は一つにとどまらず、家族や仕事・学校や人間関係、健康や経済的な問題、未来のことなど複数にわたります。過剰な心配が生活の中心となることで日常生活の妨げにまでなることも多く不安感から落ち着かず、イライラしたりする精神症状に加えて、筋緊張、不眠、倦怠感などの身体症状や集中力の低下などを来します。

疫学

全般性不安症の患者さんの81.9%が生涯の中で併存疾患を有し、併存疾患としてはうつ病や双極性障害、不安障害などが特に多くなっており、うつ病は併存率が52.6%と最も高くなっています。

全般性不安症に特徴的な身体症状

この疾患で訴える身体的主訴は似通っていて、筋緊張や頭痛、腰痛、不眠、倦怠感などの問題から医療機関を受診します。その他にも自律神経症状と言われるような嘔気や消化器症状、動悸、発汗、震えなどを認めます。

治療法

①薬物療法

全般性不安障害に対してはデュロキセチン(サインバルタ)、プレガバリン、ベンラファキシン、エスシタロプラムは比較的良好な忍容性を認め、有効性も確認されています。また、サンプル数は少ないですがミルタザピン(リフレックス)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、フルオロキセチンも同様に有効性や忍容性が認められています。クエチアピン(セロクエル)はハミルトン不安評価尺度(HAM-A)において最大の効果を示し、パロキセチンやベンゾジアゼピンも同様に有効でした。このように有効性が指摘されている薬剤は多岐にわたるため、最初の薬剤が有効でなかった場合も根気強く薬剤変更を行っていくことが必要です。

②認知行動療法

心理学の理論である認知行動理論に基づき、非適応的な振る舞い(行動)や考え方(認知)を合理的に修正し、セルフコントロールを体系的に学ぶとともに、患者さんが自立した生活を送れるように援助する心理学的治療法です。
但し、内省力と一定の集中力を要する治療であり、全般性不安障害の方の「落ち着きなさ」「集中力低下」などの症状が強い場合には適応になりません。

全般性不安障害の認知行動療法の代表的なモデルとしてBorkovecモデルを紹介します。Borkovecモデルでは、全般性不安障害の患者さんは知覚された将来の脅威に対して、「認知的回避(cognitive avoidance)」反応として「くよくよ心配し続ける」ことで本人としては適せるに対処しようとしているつもりですが、結果的には逆に過剰な不安の病理につながってしまっていると想定されています。

まずは患者さんがセルフモニタリングによって自分が「心配」を始める「出来事」のような外的なきっかけ、或いは、感情・身体反応・認知・行動・注意のような内的なきっかけをとらえることが重要です。何かのきっかけで心配が始まり身体反応や認知などの悪循環に陥って不安がどんどん強くなり、心配がやめられなくなるという循環を患者さんに理解してもらい、この悪循環を「自分が心配したり不安になったり、筋緊張させなくても物事はあるがままに進んでいく」という現実を理解し、リラックスして毎日を過ごせる好循環に替えていくことがゴールとなります。全般性不安障害の患者さんは「心配する」ことは大切なことで決してやめてはいけないという非機能的な信念を持っていますので、この信念を同定し、再構成(修正)することが認知行動療法の中心的なテーマとなります。

これ以上は細かくなりすぎますので機会がありましたらブログにでも書こうと思います。

③リラクセーション

不安に随伴する自律神経系の反応のコントロールを目的としたもので、最もよく用いられるのが漸進的筋弛緩法です。

④エクスポージャー

現実もしくはイメージの中で不安場面に患者さんを直面させることで不安を軽減する方法です。全般性不安障害のエクスポージャーでは、心配している将来の出来事の中でもっとも恐れている状況を特定し、その状況を頭のなかで想像することなどを行い、このように不安をあえて経験し徐々に繰り返しながら不安反応の軽減を図っていく技法です。細かい部分は割愛していますが、慎重に行う必要があり、専門家の指導に従ってきっちり行っていくことをおすすめします。

診断基準(及び診断ガイドライン)

DSM-5

  • A. (仕事や学業などの)多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配(予期憂慮)が、起こる日のほうが起こらない日より多い状態が、少なくとも6ヵ月間にわたる。
  • B. その人は、その不安を抑制することが難しいと感じている。
  • C. その不安および心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6ヵ月間、少なくとも数個の症状が、起こる日のほうが起こらない日より多い)。
    注:子どもの場合は1項目だけが必要
    1. 落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
    2. 疲労しやすいこと汗
    3. 集中困難、または心が空白となること
    4. 易怒性
    5. 筋肉の緊張
    6. 睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または、落ち着かず熟眠感のない睡眠)
  • D. その不安、心配、または身体症状が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
  • E. その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない。
  • F. その障害は他の精神疾患ではうまく説明されない[例:パニック症におけるパニック発作が起こることの不安または心配、社交不安症(社交恐怖)における否定的評価、強迫症における汚染または、他の強迫観念、分離不安症における愛着の対象からの分離、心的外傷後ストレス障害における外傷的出来事を思い出させるもの、神経性やせ症における体重が増加すること、身体症状における身体的訴え、醜形恐怖症における想像上の外見上の欠点や知覚、病気不安症における深刻な病気をもつこと、または、統合失調症または妄想性障害における妄想的信念の内容、に関する不安または心配]

ICD-11における診断に必須の特徴

  • 著しい不安症状があり、以下のいずれかに表出する
    • 特定の環境的状況に限定されない全般的な憂慮(「自由に浮動する不安」)
    • 日常生活のいくつかの異なる領域(たとえば仕事、経済面,健康,家族)で,悪いことが起こるのではないかという過度な心配 (予期憂慮)
  • 不安や全般的な憂慮、あるいは心配は、以下のような付加的な特徴的症状を伴う:
    • 筋緊張.運動性の落ち着かなさ(体がじっとしていられない感じ)
    • 交感神経の過活動、吐き気や腹部不快感のような頻回の胃腸症状、動悸、発汗、振戦、身震い、口喝など
    • 神経質さ、落ち着きのなさ、または「神経を尖らせている(イライラ感、はりつめた感じ) 」という主親的体験
    • 集中を維持することの困難
    • 易刺激性(些紀なことでもイライラしやすい、怒りやすい)
    • 睡眠障害(入眠困難や中途覚醒、あるいは熟眠感のない睡眠)
  • 症状は一過性のものではなく、少なくとも数力月間持続する.症状がある日の方がない日よりも多い
  • 症状は、ほかの精神障害(例えば、抑うつ障害)によってより良く説明されない
  • 症状は、他の医学的状態(例えば、甲状腺機能亢進症)によるものではなく、また中枢神経系に作用する物質や医薬品(例えば、コーヒー、コカイン)の作用やそれらの離脱作用 (例えばアルコールやベンゾジアゼピン)によるものでもない
  • 症状は持続性の不安症状の体験に関する有意な苦痛や、個人生活、家族生活、社会生活、学業、職業あるいは他の重要な機能領域において有意な機能障害をもたらす。機能が維持されているとしてもそのために普段より多大な努力を要している。
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