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社交不安障害(社交不安症)

社交不安症は「あがり症」や「プレゼン恐怖症」「会食恐怖」などともいわれる疾患で、主には下記のような場面など、他者から注目されるかもしれない場面で過度な緊張や不安、恐怖を感じそれを回避したり我慢して耐え忍ぶ結果として社会機能や対人関係に障害を生じている疾患です。

典型的な苦手場面

  • 人前で話す
  • 人と食事をする
  • 会議で発言したりプレゼンをする
  • 目上の人や同僚との会話
  • 顔が赤くなることが気になる
  • 気持ち悪くなったり嘔吐してしまうのではと不安
  • 汗をかくことが気になる

などの症状を持つ方がこの疾患に分類されます。

元来の社交不安障害から現代の社交不安症の概念は拡張と変遷があり、かつての人前でスピーチが苦手で極度の緊張や不安、恐怖を伴うパフォーマンス恐怖症やプレゼン恐怖症というものが対人相互関係への不安へと転換してきています。

かつては独立した疾患ではなく社交恐怖(social phobia)という名称での記載はJanet(1903)の症例報告が初めてとされ、その後も恐怖の対象がほとんどのパフォーマンスや社交状況に及ぶ場合はパーソナリティー障害であり、社会技能訓練が適応とされていた時代から1985年のLiebowitzらが「それまで行動療法家にしか知られていない不安症」「無視されてきた不安症、社交恐怖」という総説を発表し状況は一変しました。ほとんどの社交場面を恐れる全般性の社交恐怖もDSM-ⅢRからは現在でいう社交不安症に含まれるようになり、その後の多くの無作為割り当て研究によってSSRIと認知行動療法の有効性が確立されました。そしてICD-10(1990)では「比較的少人数でも注目を浴びることを恐れ、そのような社交場面から回避するようになる」であったが、ICD-11では「対人相互関係(例えば話し合い)、見られること(例えば飲食)、他の人の前でパフォーマンスすること(例えばスピーチ)などを顕著に、過度に恐れ、不安がること」と診断要件が変化しています。

疫学

1990~1992年に一般人口を対象とした米国併存研究(National Comorbidity Survey)では社交不安症を生涯有病率は13.3%、2001~2003年の調査では生涯有病率が12.1%と報告されています。そこから近年になるほど有病率は上昇している傾向があり、社交不安症の37.2%が大うつ病性障害を、23.9%がアルコール依存症の生涯診断を有します。

日本では2002~2006年の世界精神保健日本調査ファースト、及び2013~2015年の世界精神保健日本調査セカンドでは社交不安障害の生涯有病率はそれぞれ1.4%、1.8%とアメリカと比べて非常に低くなっています。

併存症

典型的な全般性の社交不安症は人生の早期に発症し、慢性に経過するため、種々の併存症を発症しますが、時間的には社交不安症が先行するため、社交不安症を主診断とするのが妥当な場合がほとんどです。

併存症としては限局性恐怖症、うつ病が多く、うつ病の扁存率は35~70%とされます。一般人口を対象とした場合も34%がうつ病を併存しており、社交不安症を有しない場合の3.3倍でした。
また、回避性パーソナリティ生涯と全般性の社交不安症との異同に関しては長年議論されてきています。批判や避難、拒絶への恐怖から対人接触のある職業を避け、遠慮するという回避性パーソナリティー障害と全般性の社交不安症は症状等の類似点と一方で社交不安のない独立した回避性パーソナリティー障害が存在することから、社交不安は連続的なスペクトラムとしてとらえることができます。即ち
診断閾値以下の恥ずかしがり屋~社交不安症~全般性の社交不安症~回避性パーソナリティー障害を併存する社交不安症
といった具合の連続性を念頭に置きながら理解しておくことがよいかもしれません。

治療

治療としては薬物療法や認知行動療法があげられます。
また、自然な成長により症状の改善が可能かという観点に立つと年代も重要となります。青年期(11歳~20歳)であればパーソナリティーの成長によって対人相互関係への不安が解消されていく可能性は十分にあるわけですが、実際に受診に至る青年期の方はほとんどが不登校や通信制の高校生、休職中やひきこもり状態にあり、仲間関係から既に退却してしまっているケースが多く、その点でパーソナリティーの成長による解消が難しくなっているケースも多く、薬物療法や精神療法だけではなく、就労支援等も利用しながらの治療介入が望ましい場合もあります。

薬物療法

社交不安症の薬物治療の第一選択はSSRIです。厳格な参加基準における臨床試験においての有効性が約50%くらいとなっており、効果が発現するまでは数カ月を要することも多く、説明が不十分な場合は治療中断の可能性もありますので十分な説明が必要ともいえます。また、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は短期的に効果が速やかで確実ですが依存性などの観点からも使用する場合は低力価からが望ましいと言えます。ちなみに、よく内科等で処方されるデパスは高力価でかつ短時間型であり、連用には注意が必要で、当たり前のことですが、私は最初から処方することはまずありません。

診断基準(及び診断ガイドライン)

DSM-5

  1. 他者の注目を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面に対する、著しい恐怖または不安。例として、社交的なやりとり(例:雑談すること、よく知らない人と会うこと)、見られること(例:食べたり、飲んだりすること)、他者の前でなんらかの動作をすること(例:談話をすること)が含まれる。 注:子どもの場合、その不安は成人との交流だけでなく、仲間達との状況でも起きるものでなければならない。
  2. その人は、ある振る舞いをするか、または不安症状を見せることが、否定的な評価を受けることになると恐れている(すなわち、恥をかいたり恥ずかしい思いをするだろう、拒絶されたり、他者の迷惑になるだろう)。
  3. その社交的状況はほとんど常に恐怖または不安を誘発する。 注:子どもの場合、泣く、かんしゃく、凍りつく、まといつく、縮みあがる、または、社交的状況で話せないという形で、その恐怖または不安が表現されることがある。
  4. その社交的状況は回避され、または、強い恐怖または不安を感じながら堪え忍ばれている。
  5. その恐怖または不安は、その社交的状況がもたらす現実の危険や、その社会文化的背景に釣り合わない。
  6. その恐怖、不安、または回避は持続的であり、典型的には6ヵ月以上続く。
  7. その恐怖、不安、または回避は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こす。
  8. その恐怖、不安、または回避は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。
  9. その恐怖、不安、または回避は、パニック症、醜形恐怖症、自閉スペクトラム症といった他の精神疾患の症状では、うまく説明されない。
  10. 他の医学的疾患(例:パーキンソン病、肥満、熱湯や負傷による醜形)が存在している場合、その恐怖、不安、または回避は、明らかに医学的疾患とは無関係または過剰である。

ICD-11

    • 対人的な交流(例:会話)
    • 見られていると感じながら何かをする(例:人前での飲食など)
    • 人前でパフォーマンスをする(例:スピーチをする)
    などのうち、1つ以上の対人的状況で一貫して起こる顕著で過度な恐怖や不安を特徴とする。
  1. 当人は、他人から否定的な評価をされるような行動をとったり不安症状を示したりすることを心配している。
  2. 関連する対人的状況は一貫して回避されるか、さもなければ強い恐怖や不安に耐えている。
  3. 症状は少なくとも数カ月持続し、個人、家族、社会、教育、職業またはそのほかの重要な機能領域いおいて有意な苦痛や障害をもたらすほど十分に深刻である。
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